top of page
Liner notes

2016.11.4 Release

4th Album「ルテンの空」

 

7.さざれストーン
8.小さなニューヨーク
9.バス・ストップ
10.チケチュライ
11.夜明けのスローダウン

 Concept:

流転(ルテン)とは…
仏語。生まれ変わり死に変わって迷いの世界をさすらうこと。

闇から光へ、そして光から闇へ。
人生はその繰り返しであり、万物もまたそんな連鎖である。
反復し継続していく事でようやく見えてくる何か。
僕らは腰を下ろし、移ろう時間の中でいつもそこにある空を見上げる。
時に水の上に浮かぶ様にあてもなく途方もなく漂い、時に通勤電車の様に揉まれ揺られて彷徨いながら。
それでも、また強く生きてゆく。
僕らはいつだって巡り合い、きっと変化してゆける。
そんなルテンの空の下で巡る11のストーリー。

メガネの車窓から。
​メガネの車窓から。

この曲が出来たのは今から2〜3年前。
なんとなぁくなノリで、何故か出来ちゃった曲。
一生懸命、楽器に向かっても作曲出来ない時は出来ない。
その逆で、この曲のようにノリで出来ちゃった曲も勿論ある。
むしろ、ノリで作ることが最近は多い。

楽器を持つと、どうしても僕は構えてしまう。
なので洗い物をしている時や、お風呂で頭を洗っている時に作曲するケースも多々ある。
この曲に関して言えば、まずはピアノの前に座って、大好きなエレピの音色を選ぶ。
頭の中で好きなリズムを刻み、気分がのってきたところでポロ〜ン。


そして、完成。


ノリで出来ちゃった曲はこんな感じ。
リズムからメロディをイメージしていく作業はゴスペルやソウルミュージックに似ている気がする。
ちなみに不思議なもので、ベースのスラップのフレーズやギターのカッティングは既にこの時点で頭の中で鳴っている。


「メガネの車窓から。」のタイトルからして、何だこの曲は?と言う人も多い。
「メガネを通して映る景色は果たして本物なのか?」と言った僕のトンチンカンな脳みそからのメッセージを軸にした内容。

裸眼だと数センチ先がボヤけて歩くことすら出来ない。
皆が裸眼で見ている世界と同じものが、果たしてメガネを通した僕の目にも、同じように見えているのか。

僕は思った。
きっと皆は皆でそれぞれに見え方が違っていて、同じ見え方はきっとないだろうなって。

裸眼ではブレて見える世界に僕は少なからずとも恐怖心がある。
この恐怖心はきっと消えない。
ただそんなちょっとしたブレの中にこそ個性があるんじゃないだろうか、と思うようになった。
時にそれが不安になるが、時にそれが一段と最高にファンキーと思うこともある。
人と違うことに怯えず、人と違うことを認めて行けたら、それはきっと自分の強い味方になる。

地下鉄に乗り、暗いトンネルの中を無心に進む。
無機質な物質に身体と心を揺すられながら、意思とは無関係にトンネルの先へそれは進む。
いつか電車は地上へ飛び出す。
闇から光への入り口。
それはいつも一瞬だ。
僕の心はいつも光を求めては、その光に怯えてる。 

メガネを外すと一面に広がるブレた世界。
さて、どう歩いていこうかな。

ルテンの空
​ルテンの空

万物の起源とは何か。

火と答え哲学者もいれば、いやいや水だと答える哲学者もいらっしゃる。
古代ギリシャ人はあれこれと、なんとも知的な頭が良い会話をする。
結局のところ、どちらなのか。

時間と言う軸の上に気がついたら皆、ふわっと浮いていて、スーッと終わりを迎える。
ただ、始まりがどれかわからない訳だから、終わりだってわからない訳で。
スーッと終わりを迎えたと思ったらまた、ふわっと浮いた時間軸に立っている。
色々と考えてしまうけど、もしかしたら、それだけの事なのかもしれない。


流転(ルテン)と言う言葉。


物事の移りゆく様、風景。
スタートやゴールを一つの点として捉えるなら、ルテンはそれを結ぶ線。
僕らが知ることが出来る人生は、ほぼルテンの中に存在している。
巡り行く季節の中に更に細かく刻まれた時間ってのがあって、その中にはそれぞれのドラマがある。
宇宙を中心にその物事を捉えると、本当にちっぽけなものになる。
ただ、そのちっぽけな世界にも沢山のエネルギーが存在する。

新しいスタートを切るキッカケを僕らはいつもどこかで探している。
いや、ただただ密かに求めているだけ、かもしれない。

変化することが少し怖い。
背中を押してくれたら、と思う事がある。
ただ、背中を押したところで、おそらく微動だにしないだろう自分がいる。

変化しないことに不安になる。
ワガママなもんだなぁと思いながらも、僕らは細胞レベルで常に動いている。
身体こそ不自由になっていくが、意識だけはいつだって自由なもんだ。

手を引っ張られることも、実は嫌だ。
どこへ連れて行かれるのかわからない。
不安になって、目の前の手を振りほどく。
無意識にお互いに悲しい顔になる。

あーだこーだ考えても結局。
自分のことは自分でしか解決する術はない。
あーだこーだと考えて、考えて。
考え抜いた先に見つかる奇跡の言葉。
最後は不思議といつも同じだったりする。
21世紀の言葉をかりて表現すると、極論、この言葉で収束するかもしれない。


「ま、とりあえず良いんじゃね〜?」


ファンキーな21世紀の日本人と、古代ギリシャ人の哲学者たちとの対談を是非見てみたい。
どこからどう巡ったらこうなるのか。
人は変われる。
We can change いつだって。

moonglow
​moonglow

真夜中に家を出て、ちょっとそこまで歩く。
季節のわりに、随分と肌寒く感じる。
大通りから30秒ほど外れた路地裏。
家々の隙間から月明かりが僅かに差し込み、そこにはなんとも言えない奇妙な静けさが留まっている。

突然通り過ぎる車の音が時を切る。

無音の中でゆったりと広がる妙な時間。
誰もそこには居ないのに、誰かがそこにいる様な。
感覚が研ぎ澄まされているせいなのか、自分が不安定なだけなのか、誰も教えてはくれない。
露出している肌の表面がざわつく。
そんな時に、いつも語りかけてくれるヒト。
今日は居ないんだ、と右手をそっとポケットにしまう。

きぬずれと、コンクリートを擦る足音が一瞬止む。
ひとつふたつと間があいて、のんびりと遠ざかっていく。
そっと、そっと。
元来た道へ遠ざかっていく。

真夜中の路地裏にはなんとも言えない奇妙な静けさが留まっている

Love Fuzzy
Love Fuzzy​

ビールを片手に歩きながら飲む。
傾けたその先に、三日月が静かに浮かぶ。
都会はもうすっかり寝静まっている。
先ほど立ち寄ったコンビニの明かりが遠くに見える。

優柔不断な自分の性格に小さな舌打ちをする。
行き場をなくした想いが、早足で身体の内側にかけていく。
誰にも知られたくない、その時だけはそう思えた。

まぶたを開くことも面倒で、酔いに身を預けて”ふらふら”を楽しむ。
無表情な野良猫が横切る。
しばらくすると、それまでの微熱が足下へスーッと降りていく。
誰が促した訳でもないのに。


「アルコールが蒸発する夜」


公園のベンチで考える。
今、自分が何を考えているのかを、考える。
見当たらない、まとまらない。
無駄な時間、と気が付いた頃には酔いも眠気も覚めて。
過ごしたくない一人ぼっちの時間は望んでもいないのに訪れる。
くすんだ都会の空に、チカラ弱く光る小さな星。

夢追い人が寝つけない夜は続く。

ラストワルツを君に
​ラストワルツを君に

見渡す限りに広がる大平原の真ん中に、ベッドがひとつ。
その隣に頬のこけた老人が佇んでいる。
白のワンピースを着た老婆がベッドに横たわる。
彼は彼女にブランケットをかけ、彼女の耳元で何かを囁く。
彼女は少し頷いて、何も返さなかった。
その後も一言も口を開くことはなかった。

ベッドから少し離れた彼は、ゆっくりふた呼吸ほどしたのちにワルツを踊った。
大きめの幾分ヨレた、つばの長いフェルトのハットが軽く上下する。
手なれた動きで1、2、3…と小さく繰り返し呟く。
熟練の感覚のような足運びで、無意識に身体を揺する。
時折、遠くに目を向けて思い出と会話しながら踊っている、と言った様子だ。

夕陽が地平線へと吸い込まれていく。
見知らぬ鳥たちが空を流れる様に駆ける。

彼は踊り続ける。
かまわず無心でリズムを刻む。
今この瞬間に自分の出来る精一杯のワルツを踊る。
オレンジ色に輝く大地に少しずつ、少しずつと影が染み込んで行く。
しわくちゃな頬の溝に光る、夕陽と闇。

彼は踊り続ける。
しわの数だけ共に過ごした彼女との約束を果たすために。

1、2、3…1、2、3…。

時を惜しむかのように繰り返し、また繰り返し。
無風の中で、レモングラスの葉が少しだけ揺れていた。

影と霧
​影と霧

「影」

影がのびる。
影のその先には”記憶”が存在する。
それはまだ少し温かく、ついさっきまでは確かにそこに存在していたもの。
振り返ると一瞬何かがよみがえり、次の瞬間その場から全てが消えて、結局、現実だけが残る。


「霧」

霧雨の漂う音に耳を傾けて、遠くに灯る街灯を眺めると不思議と時間が止まったかのように錯覚する。
時間が止まる、という事は現実的ではない話だが。
仮にそんな瞬間があったとして。
背後から足音が聞こえきたら、その足音の正体は果たして誰か。
過去に出会った人なのか、未来の自分なのか。
もしかしたら…ただの酔っ払いという可能性もある。


ウッディ・アレンの「影と霧」の世界観が僕の中にどうしても印象深く残っている。
この映画はモノクロだが、その作品の中には静けさと不安しかない。
この2つが見ている側の心の端に、じとっとした恐怖感を貼り付ける。


だから僕も、そんな作品が書きたかった。

橋本康史 Official site

bottom of page